大手前再開発事業の白紙撤回と佐伯市長選・市議選について

2013年1月24日

佐伯市の現状を憂う市民の会
田村 耀郎

去る1月18日、西嶋市長は今年4月の市長選への再々立候補を表明した。

よもやと思っていたことが起こった。昨年の12月議会で市長は「出馬については熟慮中」と答えていたので、8月の「白紙撤回」表明(大手前事業の頓挫)の責任の取り方を考えているのだろうと推測していたら、「道半ばの大手前(再開発計画)の後処理をすること」が自らの責任を果たす途と思い至ったということらしい。この人の発想には本当にびっくりさせられる。

通常の感覚では、自らの責任で失態を引き起こした以上、謝罪の上、即時に辞任するか、反省・謹慎して、少なくとも再出馬は控えるものである。この市長には、自らの責任の自覚も「恥」の感覚もないようである。

大手前事業を「白紙撤回」せざるを得なくなった理由は種々あっただろうが、その「責任」が他でもない自らにあることを口では殊勝に認めながら、舌の根も乾かないうちに再出馬、再任を画策する。市長選で洗礼を受ければ、責任問題など吹っ飛ぶという計算なのであろう。

新人3人が立候補しており、「現職の強さ」もあって、またしても「漁夫の利」が得られると踏んだか?佐伯市民もいい加減舐められたものである。正に、「憂うべき事態」になってきた。

仄聞する所、先日の記者会見の直前に、心配されていた中心市街地活性化事業の認定「取り消し」の問題が、昨年8月以来の関係者の努力があって、関係当局との協議で解決したようであって、そのこと自体は佐伯市にとって慶賀に耐えないところである。「引き続き頑張りなさい」という「温情」なのであろう。

そのお蔭で、市長の再出馬の決断が為されたということであろうが、誤解してはいけない。当然のことながら、今回の「ヘマ」で佐伯市政に「要注意」のマークがついたことに変わりはなく、今後はより厳しくチェックされることになるのは必定である。今の予定で、27年度に「市民の支持を得た事業計画」を再申請するとして、その時、以前と同一の人物が「恐れながら」と出て行けば、「責任者はあなたで、大丈夫ですか?」となるのは請け合いである。「新しい酒は新しい革袋に」というではないか。

そういうことであるから、責任者は責任を取って辞めなければならないのである。辞めなくても良ければ、誰がやっても良いことになる。今の時代、無責任な政治家や社長がゴマンといるからといって、それを許す市民ばかりとは限らない。

何れにしても、今回市長選の争点の一つが「大手前問題」であることに変わりはない。西嶋市長の「白紙撤回」宣言の内実は、「13階建ておよび4階建てマンション計画案による市街地再開発事業、土地区画整理事業及び公園事業などの関連事業」の中止であるが、大手前再開発の必要性の認識に変わりはないから、24年度以降も「基本構想レベルから再構築する」というものである。

歴史資料館及び観光交流館(つたや旅館)の事業は、大手前再開発も含めた中心市街地活性化事業全体の数値目標達成のために(その中核の大手前事業が白紙になったために)、むしろ、事業継続の要請は強まったぐらいだ。

それもあってか、執行部は、これらの事業も含めて「基本構想レベル」が固まるまでまったらどうかという意見(これは、事業推進派の急先鋒の清田議員の意見ではあった)にも耳を傾けず、現計画に固執している。例えば、歴史資料館について、現計画が「三余館」を倉庫等に転用する計画になっているために、現在同所で為されている会議、集会、教室等の利用(言うところの三余館機能)を大手前の「公共棟」に移すことが暗黙の前提になっている、

一方で大手前事業は「白紙」と言いながら、意識の上では「公共棟建設」は決して「白紙」にはなっていないのである。隠すより現れる。要するに、市長の手法は、全てがその場しのぎの言い逃れなのである。今はひたすら低姿勢に終始して、再選されたら、またぞろ現計画を(若干修正しながら)持ちだそうという腹づもりなのであろう。

これは全て、西嶋市長が自らの責任を取らないことから生じている。なぜ「白紙撤回」になったのか、その責任は誰にあるのか、誰がどういう責任をとるのか、今後どうするのか。この全てが曖昧・ウヤムヤになったまま、選挙になろううとしている。市議会も、9月及び12月の本会議の機会があったにも拘らず、市長の責任追及を行い、事態解明に努めようとした議員は少なかった。「問責議決案」も「不信任案」も提起すらされない。

市長に無批判に追随してきた議員が多数派であるから、当然のことと言えば当然であるが、まことに嘆かわしい状況ではある。想像したくないが、もし今度の選挙で西嶋氏が再選されることにでもなれば、彼の今回の失敗の責任は追及されない(市民によって不問に付されることになった)ということになり、大手前再開発問題でも、あくまでも現在までの「基本構想」を維持し、若干の手直しをして(目くらまし)強行しようとするであろう。その為に、今はひたすら口をつぐんでやり過ごし、乱立気味の市長選の「お願いします」の連呼の興奮の中に責任問題を投げ込もうというのである。

今こそ、市民の良識が示されなければならない。

私どもは、昨年1万2千人を上回る署名を集めて、「大手前事業計画」(13階建てマンション案)について住民投票を実施すべきと市議会に迫ったが、市長の突然の「白紙撤回」表明によって、躱わされてしまった。「大手前の事業」をしないことになったわけではないのである。十分な説明がないために、市民には誤解がある。

今、問題なのは、市長の責任追及である。市長選がその唯一の機会になってしまっていることを、多くの市民に考えてほしい。


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